アトリエ白美「渡辺肖像画工房」 渡辺晃吉
- 平成15年12月31日(水曜日)
【晴】
2003年を振り返ってみると、何よりも記憶に留めなければならないのは、この年も、かつての年のように「戦争」の年となった事ではないだろうか。
国内は10年余もって経済の低迷による、先の見えない不安が日常化し、最近になって、やっと目前に光が燈り始めた感を、しっかりとした手答えとはいえないものの、実感できるようになったのは良い事ではあったが、
戦後60年近くたった今、日本もとうとう戦場に兵士を送る事態が現実のものになりつつある。
自衛隊の海外派遣の賛否には、それぞれの立場で確固たる理念もあろうかと思う。
せめて、隊員諸氏の無事生還を祈るだけである。
今年は久々の公募展出展を果した年であり、いずれも入選、入賞できたのは何よりの収穫であり、10年余も昔に開催した「師弟展」以来、ささやかではあるが、二回の個展を開催できた事も、身内をはじめ、周囲の多くの人達の協力援助の賜と、感謝している。
来る年にどんな事が待っているのか知る術もないが、新しい扉が開かれる予感を強く感じる。
年末直前にイランで起こった地震の被害は、あまりに甚大で悲惨であった。
世界各国から救援の手が、様々の形で差し伸べられ、我が国からも国際緊急援助隊の医療チーム本隊が、イラン南東部のケルマンに到着、休む間もなく現地に向い、被災者の治療に当たる事になる。
活動に当たるメンバーに、心からの啓意を表したい。
新しい年が我が家にとってだけでなく、善意ある全ての人にとって恵み富かな年であって欲しい。
そして、世界のいたる所から助けを求める手を伸ばす人達にとって、何より救済の年になる事を心から祈りたい。
行く年に感謝、来る年に希望を。
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- 平成15年12月30日(火曜日)
【晴】
ここ何日間か強い西風が吹いている。
行きは良いのだが、帰りは向い風の中を必死で自転車のペダルを踏んで、約10kmを走らなければならない。
いつだったか、たまたまカルトンを持っていたので、子供の頃に遊んだ帆掛け舟の事を思い出し、身体の前に斜めに置いたところ、何とそのとたんにペダルが軽くなった。
考えてみれば当り前の事なのだが、この原理を何とか形に出来ないものだろうか。
ただ手に持っていたのでは何かの時に危ないし、かと言ってあまり大掛かりでは使うのにためらいがある。
年が明けて時間があれば、少し真剣に考えてみたいものだ。
もしかして、実用新案になったりして。
ともあれ、2003年もあますところあと一日となった。
平凡な毎日の繰り返しこそ幸福の第一条件といわれるが、世界は動乱の嵐が吹き、戦争の年となったのは衆知の事。
それに比べ、この一年の何と恵まれた年であった事か。
ひとり画室で筆を使いながら、この年への感謝と来る年の平安を祈った。
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- 平成15年12月29日(月曜日)
【晴】
いつもより少し遅れただけなのに、土間の戸を開ける音を聞きつけて、大家さんとチビ野良が迎えに来た。
今日のエサは昨晩の残りの魚とごはんなので、皿の上でよくかき混ぜているそばから、チビ野良がかすめ取って行くのに比べて、大家さんはさすがに大人の風格でじっと待っている。
やっと準備が終わり、二匹が朝食に夢中になっている間、画室のチビ達のケージを掃除してからコーヒーを入れる。
ホッと一息ついた後に友人からの便りの返事を書き、中途になっている作品の何点かを加筆する。
今日チビ達が家に戻れば、明日からは自宅の周りでも掃除しようと思っているが、今のところはどうなるのか分らない。
何しろチビのケージを自転車で運ぶ訳にもいかず、長男に運んでもらわなければならないからだ。
既に家に戻った連中は、画室にいた時のように、広い所で思いきり飛び跳ねられないのが少し気の毒。
夜はなるべくそばにいて、声を掛けたり頭を撫でたりしてやるのだが、時々は運動をさせないと体調にも良くないだろうから、年が明けたら、一匹づつ画室に連れて行ってやろうと思う。
小さなケージを何かで包んで風を防げば、何とか運べるだろう。
秋に一回グレをその方法で画室に連れて行き(※平成15年11月2日参照)、一日ゆっくり遊ばせてやった事があった。
それ以前には少し体調を崩していたのが、その後だいぶ回復して食欲も出たし、便通も正常に戻って一安心した。
今日は師走の29日、大つごもりまであと3日だ。
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- 平成15年12月28日(日曜日)
【晴】
冬休みの朝の道には、自転車通学の学生がいないので、本当に助かるのだが、交差点を渡る時、右折の車が横断歩道を渡るこちらの直ぐ近くまで突っ込んで来て威嚇するのにはどうしても慣れる事が出来ず、その度に恐怖を味わう。
本来そのような行為は、かなり重大な交通違反なのだろうが、何しろ交通マナー全国ワースト第一位の当地においては、この程度の事はごく普通の運転行為で、横断中の直前を携帯片手に高笑いしながら走り抜けて行く奴さえ、その辺にゴロゴロしている。
時々思わず笑ってしまうのは、右左折する時にウインカーを点滅するのが真から嫌なのか、僅か一回か二回点けただけで走り抜けて行く、何ともセコいドライバーに出会った時だ。
そんな事に気を使う位なら、ルール通りきちんと点ければそれで済むのに、いったい何を考えているのだろうと思うと、あまりの馬鹿さかげんに、もう怒りさえ覚えない。
それでもまだ全く点滅させずに曲がる奴に比べればまだマシな方で、ご当地では年齢性別を問わず、ウインカーを点けずに曲がるドライバーが大半である。
おかげで年がら年中事故が起きているが、誰も改める様子はない。
そんなに嫌なら車に乗るな。
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- 平成15年12月27日(土曜日)
【晴】
昨夜はいつの間にか雪になっていたのに気付かなかった。
自宅を出て大沼田の谷に入ると、全山が雪化粧をして眼前にあったが、裾野には積雪がなく、それがかえって壮絶な美を生み出していた。
大気はあくまでも凛然として身を包み、固めた襟元から寒気が染み込んで来る。
見渡す限り一面の霜の中をようやく画室に辿り着くと、大家さんとチビ野良があたふたと出迎えてくれた。
早速持参のエサを分配して外に置いてやったが、チビ野良のはしっこさには、さすがの大家さんもタジタジで、大抵は自分のエサの残りもチビ野良の腹に納まっているようだ。
陽が昇ると風になった。
身を切るような寒気が止む事なく吹き続け、画室のガラス戸は絶えずガタガタと音を発てている。
いつの間にか山の雪は次第に姿を消して行き、尾根近くを白く染めているだけになった。
多分、あの雪がまだある内に、次の雪が降る事だろう。
そういえば、今夜はまた降るかもしれない。
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- 平成15年12月26日(金曜日)
【晴】
ここ数日、夕方になると南西の方角に、三日月と一際強く輝く星が、お互いを伴いながら中天にかかっている。
その様は、まるで新約聖書にある救世主生誕の伝承を、目の前で見ている感がある。
聖書はキリスト生誕の模様を次のように伝えている。
各々に啓示を受けた東方の三博士は、天に一際輝く星に導かれてベツレヘムに着き、家畜小屋のかいば桶の中に眠るイエスに、黄金と乳香、そして没薬を備えて礼拝した。
黄金は王に対して、乳香は神に、没薬は葬りのため捧げられたと記されている。
その夜、イエスのもとを訪れたのは、三人の博士の他に、荒野で羊の番をしていた羊飼いであった。
羊飼い達は天からの声に促がされて、かいば桶に眠るイエスのもとにいたり、救世主の生誕を真っ先に告げられる栄誉を得たという。
東方の三博士は全世界を、羊飼いはこの世の最も貧しい者を象徴しており、人類史上最も偉大な出来事は、闇と寒さと貧しさの中で起こった事に、救済の神秘があるのかもしれない。
帰路、南天に輝く星を眺めつつ、ふとこんな事を思った。
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- 平成15年12月25日(木曜日)
【晴】
夜明け前の街を画室へと急ぐ。
今年の冬は本当に暖かいので、どれほど助かる事か。
東の空は日の出を暗示する色に染まり、ちらほらと道を行き交う人の姿も、心なしか背筋が伸びているようだ。
いつものように、霜がまだ消えない内に画室の戸を開け、中に入ったとたんに、チビ達の騒ぐ音と、大家さんの鳴き声が迎えてくれる。
縁側のガラス戸を開け、大家さん達にエサをやってから、チビ達のケージの掃除と室内の掃除を終えると、もう時計は午前9時を指していた。
来て直ぐに点火した暖房で、室内は汗ばむ程になったので、一旦消火した後少し戸を開けると、チビ野良が早速上がって来て、じっとこっちを見つめている。
まだほんのチビ助なのに、根性は一丁前の野良になっていて、一定の距離を越えると、途端に嵐を吹いてこっちを威嚇するから面白い。
そろそろ画室のチビ達も、自宅に連れ戻さなければならない。
間もなく寒が戻って来るのだという。
この辺が限界か。
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- 平成15年12月24日(水曜日)
【晴】
21世紀に入って3度目のクリスマスが間もなく訪れる。
カトリック教会の盛式典礼では、25日午前0時から降誕祭のミサが闇黒の中で始められるが、現代では治安の問題もあり、比較的早い時間から、人々は教会に参集して、救世主降誕の祭にあずかっているようである。
キリスト生誕以来、人類は3度目の1,000年記に入り、既に3年が経過したが、世界には常に闘争と殺戮、破壊と暴力、そして悪意と敵意が充満して、平和と協調への願いが、世界のいたる所で踏みにじられている時、今こそ私達ひとりひとりの中に、善意と寛容、許しと和解、正義と愛の力を、強く信じる心を育てなければならないのだろう。
イエスの生誕は、闇黒と貧困、窮乏と疎外、搾取と収奪、絶望と失意の中で、人知れず密やかに起きたという。
ツリーもケーキもパーティーも、そんなものは一切いらないのだ。
必要なのは唯ひとつ、孤独の中にあって、ひたすら人間の救いと平和を願う心、すなわち祈りなのだと思う。
そんな者に神は豊かな祝福と慰めを与えてくれるだろう。
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- 平成15年12月23日(火曜日)
【晴】
朝の冷え込みの時以外には、暖房もいらない程の暖かさ。
午前中の塾生の話によれば、今、中高年の間には、かなりの数で心を病む者が続出しているという。
日本はあまりに恵まれ過ぎて、かえって道を見出せないのかもしれない。
チビ達を庭の遊び場に出してしばらくしてから、中に入れようとガラス戸を開けると、外の野良がいつもの二匹ではなく、いつの間にか三匹になっているではないか。
これは参ったと思いながらよく見ると、何とその内の一匹は、遊び場を脱走したチビだった。
猫二匹とうさぎ一匹が、仲良く日向ぼっこをしているなんて、今まで聞いた事も見た事もない。
慌ててケージを持って外に出てチビを収容したが、動物というのは、育つ環境でかなり柔軟な性格を持つものだという事を、最近つくづく思い知らされる。
チビが大家さんのエサの皿に鼻を近付けて、盛んに匂いを嗅いでいるのを、大家さんが不思議そうに眺めている様子は、まるでキツネに化かされているような気がしてくる。
今日は亡父の祥月命日、近い内に墓参に行こう。
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- 平成15年12月22日(月曜日)
【晴】
マナー無視の学生達に閉口しながら、凍結した道を画室へと急ぐ。
着く早々に南の庭先から、大家さんの鳴き声が聞えてくる。
早く飯にしてくれという催促なのだ。
弁当の飯に缶詰の中身を混ぜて、二匹がケンカをしないように分けてから与えると、まるで皿まで食う程の勢いで貪っている。
チビ達のケージを掃除して休む間もなく、昨日の個展会場からの荷を解き、土間に展示する作業をはじめる。
足元を何かがしきりに走り過ぎて行くので、何かなと見ると、チビ野良が土間と縁の下を行ったり来たりして遊んでいる。
絶対に触らせないくせに、こんな時には人恋しくてそばに寄って来るのだから、野良の習性はよく分らない。
午後3時少し過ぎにやっと作業が完了。
もうヘトヘトになってしまったが、チビ達を暖かく包んで、野良の夕食を用意し、少し早目に画室を閉め帰路につく。
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- 平成15年12月21日(日曜日)
【晴】
午前7時40分、昨夜から雪が積もる中を、イベント会場へと急ぐ。
午前8時少し過ぎに無事会場到着。
悪天候のせいで、まだひとりも来訪者はなく、広い駐車場をスタッフが雪かきをしていた。
展覧会場に入り、来観者受け入れの準備を終える直後、早々と来客の気配。
今日は夏の時と比べ、来観者はほとんどないと思っていたが、予想以上の出足に少し驚く。
今回から、来た人のために、作画の実際を見てもらう事にして、色紙絵の制作を行ったが、人前で描くのは思った以上に気苦労の多い仕事である。
個展終了時間まで、ほゞ人の流れが切れなかったのは有難い事だ。
終了後スタッフと共に食事を摂り、早々に帰室してチビ達の世話と雪かきをしてから帰路につく。
慌しい一日であった。
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- 平成15年12月20日(土曜日)
【曇夕方から雪】
午前中の塾生が帰った後、明日の個展出品作品の荷造りを済ませ、長男を待って会場に搬入する。
展示を無事に終えての帰り路に雪が舞い始め、折からの風に吹き飛ばされ、まるで吹雪のようであった。
気温はぐんぐんと下がり、やがて氷点下にまで冷え込んできたようで、画室のチビ達と野良達が心配。
画室に着いて直ぐに暖房を点け、表を見ると案の定チビ野良と大家さんが、震えながら帰りを待っていた。
毎年恒例の隙間の目張りをしなければと思い、北側の一部の作業を終える頃、風と雪が激しさを増してきたので、帰りの自転車を諦めて、長男の車に同乗し帰路につく。
この様子だと、24日か25日には再び雪が降るだろう。
20数年振りのホワイトクリスマスになるかもしれない。
それはともかく、明日の個展は大丈夫なのだろうか。
まあ、なるようになれか。
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- 平成15年12月19日(金曜日)
【晴】
今日は、川越から来る肖像画の塾生の初レッスン日。
以前に美術画を勉強していただけあり、飲み込みも早いし、筆もこなれているので先が楽しみだ。
午後1時から午後5時少し過ぎまでの4時間を、途中ティータイムを入れて一気に突っ走ってしまったが、それほど疲れてはいないようなので一安心。
塾生を送り出し、21日の個展準備に忙殺される。
今回は夏の時よりも出品数が少し減ったが、会場が前回より狭いので、ちょうどよい50点余の展示となる。
前回と違うのは、会場で実際に描く現場を見てもらう点だろうか。
もしかしたら逆効果になるかもしれないが、あまり、堅苦しく考えずに、お祭り気分を盛り上げる事で協力したいと思っている。
多分、相当数の人達から酷評されるとは思うが、それも勉強のうちと割り切ろう。
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- 平成15年12月18日(木曜日)
【晴】
画室の土間の入口の脇に、幅12cm、長さ30cm程の「喫茶去(きさこ)」と彫り込んだ木札が下がっている。
誰でも気軽に立ち寄って、お茶ならぬコーヒーを味わってもらいたいとの気持ちを込めて出していたのだが、先日ハイカーのグループが、姦しく入って来ようとした時に、メンバーのひとりが
「ねぇ、ここ喫茶店ですって。ここに書いてあるわ」
別のひとりが
「あら、おかしいわね。表にはコーヒー無料って書いてあるけれど」
「でもここには喫茶店てあるでしょう。行こう行こう」
「残念ね、絵を観たかったのに」
グループが帰った後に、慌てて木札にふりがなをした。
足利は茶を嗜む人が多いと聞いていたが、そうでもないらしい。
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- 平成15年12月17日(水曜日)
【曇】
日の出前の東の空は茜色に染まり、地平には濃紫の雲が見渡す限りたなびいている。
風は冷たく、街は銀鼠色の中に沈んでまだ目覚めてはいない。
道を行く車のほとんどは前照灯を灯け、場所によっては外燈も灯を消さず、今、夜が朝にバトンを渡す場に立ち会っている。
画室への道すがらコンビニの煌々とした灯が、あたかもオアシスの温もりを辺りに漂わせている中を通り抜けて行くと、凍えた身が、いっそう際立って来る。
母屋の前の車には真っ白に霜が降り、画室の中はさぞ寒かろうと思ったが、土間の戸を開けて中に入ると、意外に暖かかった。
大急ぎで南の縁側のカーテンを開けて外を見たら、心配していた大家さんの姿が、チビ野良の隣にあったので一安心。
二匹共寒さに震えているので直ぐに食事を与え、室内に入れるようにガラス戸を少し開けておく。
今日は一日寒さが続くようだ。
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- 平成15年12月16日(火曜日)
【晴】
画室の縁側から南西の方向を望むと、遥か秩父山系から上州の山並みまでが、冬の清んだ空気を通して横たわっている。
今日は朝から赤城颪が強く吹き荒び、そのために大気は凛と張り詰め、風景は硬質で透明な姿を見せ、今この地は冬の只中にあった。
風は午後になっても止まず、びょうびょう音を発てて枯葉が舞い、電線がいたる所で唸りを立てている。
家の隙間からひゅうひゅうと風が入り込むと、うさぎ達が落ち着かな気に身じろぎするのが、カサカサとケージの床を擦る足音でそれと知れる。
午後A氏来室し、一時間程を過ごして帰る。
その直後にJA足利レインボーより電話。
午後5時、新作を一点仕上げ帰路につく。
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- 平成15年12月15日(月曜日)
【晴】
赤穂浪士の討入りは、12月14日という事だが、実際は15日未明だったのか。
降り積もる雪の中を、粛々と本所吉良邸へと進む四十七士を、誰一人見とがめなかったとは考えられない。
当時、深夜の行動、しかも徒党を組んでの動きが許されるとすれば、非常事態、それも火事に備えての集団の行動位のものだったろう。
聞くところによれば、四十七士は大名火消の装束だったという。
赤穂藩の大名火消は、当時抜群であったとか。
深夜の江戸の町を雪に助けられて道を急ぐ四十七士が、もしも徒歩ではなく車で移動したとしたら、全く絵にならない。
首尾よく本懐を遂げた浪士達が、15日の早朝、本所吉良邸から、高輪泉岳寺へと向う道すがら、官憲の捕縛や、上杉家の追討集団に遭遇せずに無事に行き着けたのは、おそらく幕府の意図であったのだろう。
昨夜、フセイン元大統領逮捕の報に触れる。
炭小屋ならぬ、農家近くの穴の中に潜んでいるところを捕まったのだという。
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- 平成15年12月14日(日曜日)
【晴】
車のメーカーが全ての市販車の製造を中止して、代りに馬車とそれを引く馬を販売する事にしたら、世の中はどうなるだろう。
もちろん路線バスなどの公共的な乗物は、これまでのように存続させ、個人が乗用する乗物は全て馬車になれば、多分人は他人に対して限りなく優しくなれるような気がする。
車に乗りたい人は自分の家に馬かそれに類する動物を飼育しなければならず、それだけでも心の殺伐さが消えて行くだろうし、家族の絆も強まるに違いない。
馬車で道行く人達は、今のようなエゴの化物にならず、お互いに挨拶を交しながらすれ違えるようになると思う。
当然歩行者にも気を配れるし、歩行者も気持ちに潤いを持って道を行けるだろう。
バイクやオートバイの代りにはロバか馬に乗り、時にはラクダや牛なども、違う趣があって楽しい。
子供達のためには、セントバーナードやピレニーズなどの大型犬を乗用に訓練してみたらどうだろうか。
ついでに外燈はガス燈に代えても面白い。
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- 平成15年12月13日(土曜日)
【雨】
画室からの帰り路、東から西に長く軌跡を描いて、流れ星が天空を走っていった。
青白く明るい光は透明で濁りがなく、目の眩むようなスピードで音もなく夜空を切り裂き、ふっと消えた。
その間わずか数秒の事なのだろうが、久し振りに見た流れ星は、息がつまる程長い時間輝いていた。
子供の頃、夜空はいつも満天の星々が輝き、銀河は四季を通して頭上にあった。
夜の闇は今とは比べものにならない程深く、闇の底にはこの世のものならぬ存在が、まるで当り前かのようにうごめいているのを疑わなかった。
だから子供達は夜の便所に行くよりは、親の折檻を覚悟で布団の中で用を足し、辻を通る時には決して足元の闇に目をやらず、樹下の祠は悲鳴を押し殺して駆け抜けた。
昼間は何でもないゴミ箱は夜になると妖怪の城に変り、長屋門の下には、得体の知れないしょう気がわだかまっていた。
夜は、人間以外のものに世界を明け渡し、人間は片隅でじっと朝を待つのだった。
恐怖は重さのあるごとく覆い被さって、子供達は皆一度は鬼のあぎとに頭をかじられ、夢は常に化物との戦いだった。
今は闇は消え、いつの間にか妖怪達もどこかへ去って、あの目くらめくような恐ろしさも、子供達から離れて行った。
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- 平成15年12月12日(金曜日)
【晴】
今月末にあるイベント内個展の作品準備に入る。
予定では水彩画6点、色紙絵12点を追加するつもりだが、あまり気負わず、仕上ったものだけ追加する位の気持ちで筆を運んでいる。
前回は59点の出展なので、今回も同じような規模で開催しないと、依頼主に申し訳ないのだが、あまり無理をして、不満足な作品を出したくはないし、それはかえって来てくれる方達に失礼だろう。
今回も前回同様に写生画を中心に作品を揃え、一部肖像画コーナーに6点程展示する事になる。
前回の来展者数は、予想を上回って3時間に約300人だという事なので、今回もその位の人達が来てくれるのではないかと思うのだが、年末の何かと慌しい時なので果してどうなのだろうか。
いずれにしても、これからしばらくの間は、描きづめの毎日となる。
午後、中に入って来たチビ野良を閉じ込めて、何とかダッコしようとしたが、近付くと嵐を吹いて絶対に触らせなかった。
それ程嫌がっているくせに、夕方になり外が寒くなると、大家さんなどより、ずっと大胆に近くまで来て、人のやっている事をじっと見ている。
やはり野良はスキンシップはさせないようだ。
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- 平成15年12月11日(木曜日)
【雨】
午前中から降り出した雨は、午後に入ると本降りとなり、それにつれて寒気も強まって、暖房を点けても室内がなかなか暖まらない。
外にはいつの間にか例の二匹が並んで座り、エサが出るのをじっと待っている。
今日は家から、昨夜残したイワシを持って来たので、キャットフードと一緒に皿に乗せてやると、二匹共完全にパニクッてしまい、皿はひっくり返すは、くわえて逃げるつもりが、口に残ったのは頭だけで、美味しいところを落して行ったのを、他のに食われるはで、もう大騒ぎであった。
午後2時過ぎに、長男の車で古河の額屋さんへ下見に出掛け、午後5時少し過ぎに帰る。
これといったものは買わなかったが、結構良い品が安く置いてあったので、何かの時には利用出来そうだ。
外の冷雨に気が挫けて、帰りは長男の車に便乗して帰宅する。
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- 平成15年12月10日(水曜日)
【晴】
チビ野良の態度が日に日に大きくなって、今では直ぐ近くまで寄って来て、エサを盛り付けている最中にも、途中で引っさらって行く程の図々しさである。
一日のほとんどを南の軒下の陽だまりで過ごし、時々顔を見せる大家さんとはとても仲良しだが、いざ食い物の事になると、お互いに決して譲ろうとしないのは、やはり野良のバイタリティーだろう。
夕方になると、街道に面した集会場に住んでいる白い野良母さんが、外でチビ野良と睨み合って唸っている。
ガラス戸を開けて野良母さんを叱っても、一向に立ち去る気配がないので、チビがケガでもしないかと心配したが、もしかしたらこの二匹は本当の親子で、母さんが心配して見に来たのを、チビ野良が怒って追い返そうとしているのかもしれないと思い、構わぬ事にした。
午後5時、来室していたS氏を送り出し、チビ達の寝仕度を整えて帰路につく。
昼間からの風も止んで、宵闇の外は意外に暖かかった。
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- 平成15年12月9日(火曜日)
【晴】
今朝の冷え込みは最近で一番であった。
手袋をしていても指の先が凍えて少し痛い位だ。
膝から下がとても冷たくて、寒気がじわじわと全身を包んでくるのがよく分る。
それでも道半ばまで来ると、陽が昇ったことも手伝って熱が内々からのぼってくる。
画室近くの道端の草も、田も畑も皆霜で真っ白に化粧して、折からの朝日にキラキラと輝いている。
こんな朝、チビ野良や大家さんはどこで何をしているのか。
多分もう画室の軒下に来て、私の着くのを待っているのだろうが、夜の冷え込みをどこでしのいでいるのだろう。
野良は半分野性化しているので、それなりのバイタリティーが備わってはいるとは思うが、暗闇の中で背を丸めてじっと寒気に耐えながら夜を明かしている様子を想像すると、つい甘やかしてしまうのが人情というものか。
大家さんはともかく、チビ野良だけは家付きの猫に出来ないものだろうか。
夜は無人になり、しかもうさぎ達のいる室内に入れるのは少し無茶ではあるが、何か方法を考えてみようと思う。
納戸をねぐらにするのもいいし、自宅へ連れて来るのもいいが、それは多分家内が絶対に許さないだろう。
幸い大家さんと同じに、チビ野良も今のところはうさぎ達に手を出さない。
このままうまく躾れば、結構仲良しになるかもしれない。
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- 平成15年12月8日(月曜日)
【晴】
12月8日といえば日本とアメリカが戦争状態に入った日、つまり太平洋戦争開戦の日に当る。
物心ついた時は、日本がまだ敗戦の痛手の真っ只中にあった頃だったと思う。
寝物語に、大人達の戦争談を聞きながら育った。
身近にはまだ兵隊服や軍服を、普段の衣料として着ていた人達がたくさんいたし、近所のお兄ちゃんの何人かは、親譲りの軍帽やゲートルなどを巻いていた。
隣の太田市には、中島飛行機の工場があったため、頻繁に爆撃があった事が、街の要所に見られた時代に、義姉に手を引かれて太田市を訪れ、駅の構内に山積みされていた飛行機の残骸と、生まれて初めてのコーヒーの味が忘れられない。
多分4歳か5歳の頃だったと思う。
夜毎に聞かされた戦争の話は、幼い子供にとっては恐怖そのものであった。
戦争は死と破壊に直結している愚行である事を、心底学んだ幼年時代であった。
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- 平成15年12月7日(日曜日)
【晴】
行方不明の女子高生が、6日茨城県内で無事に保護されたというニュースに、ホッと胸をなでおろす。
救出されるまでの時間、本人とご家族が味わった苦悩を考えると、人の道を踏み外した犯人への怒りを、どうしても禁じ得ない。
ご本人が一日も早く、このような忌わしい事件を忘れて、逞しく希望に満ちて生きてもらいたいと切に祈りたい。
最近、罪悪感の欠落した人が激増して、一般人の無頼化現象が顕著であると聞く。
その根本的な原因は、やはり誤った軽薄なニヒリズムなのだろうか。
それとも、人間は本質的に悪への傾きを持っている存在なのだろうか。
地域、教育現場、ひいては社会そのものが、人々を善に向ける矯正力を失ってしまった今、大衆の方向を善へと導く方策はないものなのだろうか。
若者の一部は、自己の存在価値さえ見出せず、刹那的な快楽と犯罪行為に走って行く。
大人達の多くは、病的な自己中心性の化物と化して、後に続く者に何の規範も提供しないし、その力もない。
しかしこの社会は、それらの悪よりはるかに多くの善意ある人達によって支えられ営まれている事に希望がある。
今がどれほど暗黒に包まれていても、明日は輝く光と共にある。
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- 平成15年12月6日(土曜日)
【晴】
数日前に足利で忌わしい事件が起きてしまった。
登校途中の女子高校生が行方不明になり、乗っていた自転車が道脇の農具小屋に立て掛けてあったという。
もしも何かの犯罪に巻き込まれていたとしたら、どうか無事に帰って来られる事を祈るばかりである。
当事者のご両親の心労はいかばかりかと察するに余りあるが、この不毛の時代に生きる者の一人として、決して他人事では済まされないだろう。
事件現場は、私がよくスケッチに行く時に通る所で、たとえ昼間でも女子が一人で通るには心配の場所である。
辺りには人家がなく、広々とした田畑の中を格子状に農道が走り、通行するのはほとんど車で、通行者や自転車は極めて少ないのだ。
こんな場所で襲われたら、たとえ大の男でもひとたまりもなく拉致されてしまうだろう。
それでも、農繁期にはいたる所に人が出ているから、余程の事がない限り、何かあっても誰かの目に止まるだろう。
しかし今の時期、この辺りはほとんど無人地帯になる。
恐らく犯罪行為が行われても、目撃者はまずいないだろう。
今はただ無事の帰還を心から祈るばかりである。
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- 平成15年12月5日(金曜日)
【晴】
最近では一番寒い朝だろうか、家の北側の屋根瓦には、まだうっすらと霜が降りていた。
大沼田に入り、ぶどう棚の下の草にも白々と降霜しているのを見ると、もう冬になった事を実感する。
画室に着き、いつものように縁側のカーテンを開けると、驚いた事に、大家さんとチビ野良が仲良く並んで待っているのだ。
大家さんはともかく、チビ野良はほんの少しの気配にも反応して逃げてしまっていたのに、日に日に慣れてきているようである。
エサを食べ終えた大家さんがどこかに行ってしまっても、庭先の陽だまりにいつまでも丸まって動こうとしない。
今年はまだそんなに寒さが厳しくないのでいいのだが、いくら暖冬とはいえ冬は冬、無事に春を迎えられるか心配である。
その上チビ達をいじめる大人の野良猫が結構いるのだ。
先日も土間に追い込まれたチビ野良が、縁の下で小さくなってうずくまっていたのを助けたのだが、これからどうして生きて行くのか気になって仕方がない。
ともかくも何とか手なずけて、夜は画室の中で過ごせるようにしてやりたいと思っている。
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- 平成15年12月4日(木曜日)
【晴】
大家さんとチビ野良は、間違いなく親子のようだ。
画室の脇の道で出会った二匹が、さも親しそうに鼻をつき合せて通り過ぎて行く現場をこの目で見たが、あれはどう考えても親子だと思う。
一日の内に何回となく、大家さんとチビ野良が画室にやって来ては、エサをせがむけれど、その都度与える訳にもいかないので、不憫だが朝と夕方の二回だけにしている。
大家さんと違い、チビ野良はとても警戒心が強く、決して近くには来なかったのに、ここ数日は戸の隙間から画室に入って来るようになった。
縁側に上がったチビ野良は、うさぎ達をさも不思議そうにじっと見ている。
多分「こいつらはいったい何者なんだろう」と思っているに違いない。
エサを与えても大家さんが皆食べてしまうので、チビのために別の皿を用意してやらないと食いそびれてしまい可哀想なので、少し離れた所にチビ用のエサを置いてやると、大家さんは自分の分を食いながら、チビの皿が気になってきょときょととそっちを見ているのが面白い。
しかし、やはり親子なのだろうか、自分のを食べ終わりチビが食べている所には行くけれど、それを取り上げたりはしないのだ。
本当は無理矢理にでも取り上げたいのを、じっと我慢しているのが、大家さんの首が前後に動いている事で良く分る。
もしもこの二匹が親子でないとしたら、大家さんは本当に心優しい猫だと思う。
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- 平成15年12月3日(水曜日)
【晴】
先日届いた市の広報誌の投書に、足利市の交通マナーのあまりの悪さを訴えているものがあった。
その人は二年前に足利に引越して来たのだという。
先日訪ねて来たご両親も、あまりの酷さに呆れ果てていたそうである。
郷土を愛する足利人の一人としては、赤面のいたりとしか言いようのない事ではあるが、どうひいき目にみても、その劣悪さは毎日の体験で身に染みているので、何とも言い訳出来ないのが残念だ。
交通マナーが、そのまま人格のバロメーターとは思わないが、無関係ともいい切れない所もあるような気がする。
年を追う毎に、足利の経済、文化、教育の低迷が、その度を増していると聞くが、その事と交通マナーの劣悪さに代表される人的資質との間には、何か因果関係があるのだろうか。
11月29日(土)に、突然「足利銀行」の破綻が、新聞やテレビで伝えられた。
(土)(日)の二日間が冷却期間になるように配慮した上での報道だったのだろうが、そのおかげで週明けの12月1日は市内のどの支店でも、大した騒ぎにならず、何よりであった。
この件で足利も全国的に有名にはなったが、その理由が何とも情けない。
いつの日か、もっと誇れる中身で、郷土を全国に知らしめたいものである。
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- 平成15年12月2日(火曜日)
【晴】
日の出前に家を出て間もなく、真正面からの朝日を受けて目が眩み、ひさしのある帽子を被って来なかった事を後悔する。
早朝は自転車通学の学生達に会わずに済むのが良い。
よその土地は知らないが、足利では老若男女取り混ぜて、自転車は右側を走るものと思っているようだ。
雨の日に合羽を着ている者はほとんどいないし、傘を差しての片手運転が当り前で、夜間に点灯しているのは全体の一割にも満たない。
右側逆進、片手運転、無灯火、おまけに並列運転と、四重の違反も何のその、声高に雑談をしながら、時々辺り構わずに高笑いする様子は、人間というより、まるで猿の群れを見ているようだ。
早朝は、せめてそんな連中に出くわさなくて済むだけ何か得をした気分になる。
でも学生達ばかり悪とはいえない。
肝心の大人達、特に母親の立場にある人達が、全くルール無視の運転をしているのだから、子供達がルールを守るはずがない。
自転車も車両である事を再認識した方が良い。
午後A氏と川越からK氏来室。
特にK氏は遠路はるばると訪ねてくださり感謝。
午後4時頃、長男と共にK氏を送り出す。
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- 平成15年12月1日(月曜日)
【雨】
吟遊詩人が持つのに最も似つかわしい楽器は、やはり弦楽器だろうか。
それもギターかリュート、竪琴あたりだろう。
日本にかつて存在した吟遊詩人達の手にあったのは、三味線がほとんどだったようだ。
津軽の三味線弾き達、そして北陸の瞽女(ゴゼ)さん達。
どちらも一年の大半を放浪の旅の空の下で過ごし、時には追い立てられ、時には人にあらずと蔑まれ、石を投げられ、水を掛けられての旅であったという。
勿論、そんな人達ばかりではなかったろう。
中には彼らや彼女達の訪問を心待ちにしていた人達もたくさんいただろうし、行く先々で喜ばれていたはずだ。
よくは知らないが、お隣の韓国の吟遊詩人としてあまりにも有名なパンソリの歌い手の女性も、かつては盲目の女性であったとか。
恐山のイタコも、シャーマンであると同時に、ある種の吟遊詩人ではないだろうか。
人は全て旅人、どうせ旅するのなら、なるべく楽しく旅をしたいし、できるだけ多くの連れと共に行きたいものと思う。
人生は吟遊詩人の旅のようなものかもしれない。
平凡でも日々の何気ない生活こそ、実は珠玉の詩の一編なのかもしれないのだから。
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