アトリエ白美「渡辺肖像画工房」 渡辺晃吉
- 平成15年6月30日(月曜日)
【晴】
お母さんとケージが一緒のチビねえちゃんは、他のチビ達よりも臆病で、決してダッコさせなかったが、最近は入口を開けると直ぐに膝に飛乗って来るようになった。
相変らずチョコマカと動きは忙しないが、体を撫でてやるといつまでもじっとしていて、一向に嫌がる様子がない。
ただ困るのは、ポロポロと糞をするので、後始末が大変な事である。
体が小さいだけに、糞もお母さんのに比べると三分の一位しかない。
お母さんはチビねえちゃんがケージの外で遊んでいても、前とは違い平気でエサを食べている。
それがつい何日か前までは、自分の側を離れると心配で心配でケージの中をあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたのだ。
チビねえちゃんが戻ると、それこそ体中を舐め回して甘やかすのだが、まるで私がいつもチビねえちゃんをいじめているみたいで、誠に不本意であった。
本当に変れば変るものである。
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- 平成15年6月29日(日曜日)
【晴】
梅雨の晴れ間の陽に照らされたものは、全て光り輝く。
何にうかれているのか、前の畑を歩くキジの鳴き声が妙にはしゃいで聞える。
カラスが時折、地面スレスレの低空で庭を横切っていくのはどうしてなのだろうか。
風は途絶える事なく画室を吹き抜けて、門のそばの八っ手の花がヒラヒラと葉裏を返し、枯葉が道をカラカラと音を発てながら滑っていく。
廃品回収車の間延びしたアナウンスが、さっきから遠く近く聞えてくるが、声が掛る様子は一向にないようだ。
誰かが鼻歌を歌いながら街道を下って行く。
あの歌は確か「深い河」だ。
「深い河、神よ、私はこの河を渡って、あなたのそばに行きたい」
確か、こんな意味の歌だったろうか。
あの頃はゴスペルとは言わずに、黒人霊歌と呼ばれていたと思う。
人の気配の途絶えた日曜日の昼下り、刻はゆっくりと過ぎていく。
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- 平成15年6月28日(土曜日)
【雨のち晴】
スクーターのパンク修理を昨夜の内に済ませておいたので、今朝は久し振りに自転車を降りて、最近少し変な音を発てるようになってきた電動スクーターでの出勤となった。
まだ7時前だというのに、行く道のあちこちには散歩する人達の姿があり、かえって昼下がりよりも賑やかである。
季節柄夜明けも早く、梅雨の雨の合間を惜しんでの散策なのだろう。
昨夜来の雨が残した水溜りを避けながら、いつもの道を辿って走っていると、そこここに咲く紫陽花に混じって、白い小さな花を咲かせているツゲのような木に出合う。
それと同じ物が、母屋の玄関にもあって、今年は見事な花をたわわに咲かせている。
ほのかな甘い香りのこの花は、いったい何という名前なのだろうか。
毎年花を咲かせている様子はないので、間をみて調べてみよう。
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- 平成15年6月27日(金曜日)
【晴】
夏草にてこずる季節になると、子供の頃家にいた一羽のオスのニワトリを思い出す。
買っても育ちやしないと皆にひやかされたのを無視して夜店で買ったヒヨコが、どうした事か無事に成長したのは良かったのだが、段々トサカが立派になっていくにつれ、卵を生まぬオスどりへの関心は次第に薄れてしまい、いつかトリ小屋も跡形もなく壊れ、エサも時々台所から出る残飯を与える位で、後は商売柄少し広い庭をうろついて、ほとんど野性のように生きていた。
そんな奴だから、見るからに荒っぽい風体だし、何より汚らしかった。
庭が広かったので子供達のたまり場として、いつも誰かがうろついていたが、そんな中には大抵あいつも仲間にいるばかりではなく、ちょっとでも気に入らないとケケッと大きく叫んで突っ掛って行くのだ。
中学生位になればニワトリの一羽ごとき、何とか捌けるが、小学生では全く歯が立たず、大方の奴は一度はあいつのくちばしでせっかんされているはずである。
数少ない取得といえば、雑草を食ってくれるので草刈りをしなくて済むところ。
しかし、あいつが食うのは雑草だけではないので、いつも親父に追い回されていた。
いくら追い掛けても、ニワトリのくせに家の屋根位は平気で飛び上がれるので、まず捕まえる事は出来なかった。
犬とやり合い、猫と闘い、誇り高く庭を闊歩していたあいつの姿が、いつの間にか消えてしまったが、いったいどこに行ったのだろうか。
もしかしたら、もっと広い世界を夢見て、旅立って行ったのかもしれない。
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- 平成15年6月26日(木曜日)
【雨】
午前中やまゆり学園の生徒さん達がうさぎ見学にやって来た。
手に手にお土産のエサを携えての訪問である。
午後直ぐには友人A氏のお世話で、養子希望者の若者が二人来室し、仲良し兄弟二人組をそれぞれ引き取っていったが、貰ってもらいホッとする反面、何だか淋しい思いもあり、何とも複雑である。
この調子で皆が善い人に貰われていってくれたら良いのだが、それでも家にはまだ7匹もいるのだ。
7匹の内チャとお母さんとグレとチビねえちゃんは、多分このままずっと飼う事になると思う。
チビねえちゃんをお母さんから引離すのは、何だか気の毒な感じがする程2匹は仲が良い。
少し甘やかし過ぎる気はするのだが、人間と違い、子供を過保護でダメにする事はないだろう。
帰路H女史宅を訪問予定のため、夕方早目に画室を出るが、空は今にも泣きそうな気配で、大気はじっとりと湿っている。
この様子では、おそらくH女史宅に着く前に降られるだろう。
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- 平成15年6月25日(水曜日)
【雨のち晴】
もしもホグワーツに入学する事が出来たら、入る寮は絶対にグリフィンドールしかない。
そして、一番習いたい魔法は動物と自由に話が出来る事、その次には空を飛べる事、その次は姿を消す事、その次は好きな食べ物を好きな時に出せる事、その次は時間を自由に行き来する事だろうか。
世界は驚異に満ちているから、きっとどこかにそんな願いを叶えてくれるところがあるに違いない。
今日は強い雨と風のために、大家さんが画室に来たのは夕方近くであった。
いつもより早目にチビ達を南の縁側に移してあったが、大家さんはチビ達をいじめもせずに、歯ムキニイちゃんのケージの直ぐ近くで寛いでいた。
歯ムキニイちゃんも大家さんを恐がらずに、お互いに見つめ合っている様子を見ると、これはきっと魔法よりもっと強い力が供わっていて、人間には分らない世界の入口が直ぐ足元に口をあけているのかもしれないと思ってしまう。
明日、若い女性が二人、チビ達を見に来てくれるとの事である。
チビ達の誰かが、良い出会いをして貰われて行くのかもしれない。
少し淋しいが、そうなった時には、喜んで送り出そう。
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- 平成15年6月24日(火曜日)
【雨】
昨夜帰宅途中でスクーターがパンクしてしまったので、今朝は雨の中を久し振りに自転車で画室に向う。
うさぎのエサを切らしているのを思い出し、着くと直ぐに鎌を研いでタンポポを多目に採って、とりあえず間に合せる事にした。
全部で9匹のチビ達のケージを掃除しエサを与えると、二時間位掛ってしまうが、しばらくの間は仕方がないだろう。
歯ムキニイちゃんのケージはかなり小さいせいなのか、最近イライラが強くて、油断すると噛まれるので困ってしまう。
エサの入れ物を取ろうとしただけでも、歯をむいてかかってくるのだ。
それも本人としては精一杯の威嚇のつもりなのだろう、「うーっ」と唸り声を発てながら攻撃してくるのだが、「うーっ」と言ったつもりでも、実際はオモチャの犬の鳴き声みたいでちっとも恐くない。
本人のプライドを傷付けると可愛そうなので、精々恐がってみせてやると、うさぎのくせに結構態度がでかくなってくるから生意気である。
なるべく早い内に、広めのカーゴを調達してやらないと、あいつは本当にグレてしまうかもしれない。
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- 平成15年6月23日(月曜日)
【曇】
庭の梅の木の下に植えた茗荷が、驚く程増えているのを、梅の実を収穫している時に発見した。
今年は近所の人に教わり、梅の枝を剪定した事が良い結果を生み、幹を中心に、枝が八方に低く広く張り出したために、程好い日蔭が出来たようだ。
その下のフキも生き生きと瑞々しく、茗荷も勢い良く成長している。
前の畑の亀山のオバさんが畑の水を貰いにやって来たので、庭の隅に植えたまま放置してあった大根が、今実を付けている所を見てもらい、この実を収穫して、蒔いても良いかどうか聞いたところ、大丈夫なのだそうだ。
サヤが黄色になったら収穫し、中の種子を取り出して2〜3日天日に乾かして、秋に蒔くと大根が穫れるとの事。
せっかくの恵みなので、今年は種蒔きから始めて、大根を育ててみよう。
午前中と夕方の2回、堀越氏が来訪する。
今日は次男の誕生日である。
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- 平成15年6月22日(日曜日)
【晴】
義父の一周忌のため久し振りに一日休みとなる。
一年前の四十九日の時に比べ、集った人の数はだいぶ少なく、こじんまりとした年忌で、かえって心の静まる良い一日を過す事となった。
会食の後、失礼して帰宅し、入浴の後少し休息する。
昨日、ちょっとした拍子に背中を痛め、今日になってもなかなか良くならず、動作がだいぶ不自由なのが辛いが、安静にしていれば大した痛みではない。
以前から時々背中に痛みを感じる事があり、今回もそれが起きたのだろう。
原因は多分、若い頃のケガなのだろうが、それがいつ頃のものなのかよく分らない。
どちらにしても、それ程の痛みではないので、その内に治ってしまう。
こんな時でもないと観られないと思い、ビデオをかけている内に家内も帰宅。
ダンボール箱いっぱいの新ジャガをお土産に貰ってきたようだ。
間をみて、オヤジの若い頃の写真を参考に、肖像画を一点描いてみようか。
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- 平成15年6月21日(土曜日)
【晴】
午前7時、画室に着いてカーテンを開け庭を見ると、チビ共がのんびりと遊んでいる姿が目に飛び込んできた。
脱走したのだあいつら。
慌てて庭に降りて調べてみると、あったあった。
見事な抜穴が空いていて、そこから脱け出したのが一目で分る。
それでも遠くに逃げ出さず、近くをウロウロしていてくれたのがせめてもの救いだ。
何しろ画室の周りは、これと形のある囲いは無いに等しく、行く気になれば前の畑から山にまでと自由自在なのである。
とにかくエサ入れに少しエサを入れて、ガサゴソと音を発てながら呼んでみると、来た来た、三匹の内二匹が直ぐ手元まで駆け寄って来てくれた。
そいつらを一匹づつ捕まえて、とりあえず遊び場の囲いの中に入れ、残る一匹を捜したが、これがどこにもいないのだ。
これは遠くへ逃げられたかなと諦めかけると、畑の中を黒くて小さな奴がピョコピョコこっちに向って来る。
鼻白ニイちゃんだ。
こいつが一番すばしっこくて、曲者なのだが、1m位まで近付いて来ると、パッと逃げてしまってなかなか捕まらない。
汗まみれで追いかけっこしている内に、何を思ったのか、自分が脱け出した穴を通って、元のオリの中に戻って行った。
しめしめと穴を塞ぎ、どうやら一段落。
これはもう、本格的なオリを作るまでは、またケージで飼わなければならないようだ。
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- 平成15年6月20日(金曜日)
【晴】
6月の梅雨の晴れ間、南からの微風が吹き抜け、青葉が葉裏を返す午後程、マーラーの似合う刻はない。
5番のアダージェットは無論の事、7番や9番、そして10番も捨て難い。
こんな日に限って、外は驚く程静寂に包まれて、生活音といえば、草刈機の遠くくぐもった音か、近くの梅林で梅の実を収穫する人達の発てる物音だけで、あとはウグイスやコジュケイ、そして時折鋭く鳴くキジの声位のものだろうか。
出来るだけヴォリュームを絞って、微かに耳に届く程のマーラーが、ゆったりと画室から外へと流れ出ていく。
表をたまたま通り掛った野良猫が一匹、まるで聴き入っているかのように立ち止って耳をそばだてている姿が面白い。
街道に向けて置いてあるチビ共のオリから、時折ガサゴソと物音がするが、それも人で言えば、寝返りを打った時に発てる音のように静かで平穏なものである。
さっき入れ代えたコーヒーの香りが、妙に強く漂ってくる。
きっと空気が軽々としているせいなのかもしれない。
風に乗って微かに伝わってくるのは、落ち梅の香りか。
夏は来ぬ。全ての野と山に、そして街に村に。
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- 平成15年6月19日(木曜日)
【曇時々晴】
今朝、画室の戸を開けると、それを待っていたかのように大家さんが入って来た。
しかし、一定の距離の範囲を越えると、とたんに外に逃げて行って、決して近くまで人を寄せ付ける事はない。
誇り高き孤高の魂を失わない野良猫根性未だ健在である。
かまわない限り縁側の気に入った場所に寝そべって、堂々と昼寝をする程まで心を許すようになっただけでも上出来だし、中のチビ達にもチョッカイを出すような事もなく、チビ達も元気である。
ただ最近は、カラス共がやたらに近くまで来て、チビ達を狙っているのが何とも気に掛って仕方がない。
あいつらにかかったら、チビ達などひとたまりもなくやられてしまう。
なるべく早い内に、日除けを兼ねた屋根を、遊び場の上に乗せたいと思っている。
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- 平成15年6月18日(水曜日)
【曇】
遊び場で遊ぶチビ達の中で一番活発なのは、やはりチッピのようだ。
チッピはクロタンやチビクロニイちゃんに比べると半分位の大きさしかないのだが、それだけに動きは素早い。
最初に連れて来た弟達は、もう既に半分野生化しているかのようにたくましくなっているが、それだけに泥まみれでだいぶ汚れてきている。
今日、大家さんが初めて画室の中に上がって来た。
相変らず警戒心丸出しではあるが、少しは親しみを持ってくれるのか、一定の距離を保っている限り逃げ出さない。
ちょうど昼食の弁当を食べている最中に上り込んで来て、じっとこっちを見ている。
どうにも食いづらいので、少し皿に取り分けてやると、まるで食べさせてもらっていないかのようにガツガツと食らい付いている。
冗談じゃないよ、朝一回と昼一回、キャットフードを外の皿に出してやったし、水の器まで置いてあるんだから、そんなに腹が減っている訳はないはずなんだけれど、こいつ結構大食漢なのかもしれない。
午後、気掛かりであった友人が来訪する。
元気そうな様子に、ホッと一安心。
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- 平成15年6月17日(火曜日)
【雨のち曇】
物心ついて最初の6月の記憶といえば、今は亡き実家の兄に手をひかれ、どこやらの水路の水門近くに生えていた桑の実を食べさせてもらった時の事だろうか。
濃厚な甘味と味は、鮮烈な印象を生むには充分なものであった。
満3歳になったばかりの、間もなく終戦という初夏の記憶である。
桑の実に限らず、生まれて初めて体験する食物の記憶というのは、幾10年の歳月にも風化する事なく、今でも新鮮なのが不思議だ。
公園の南を走る国鉄両毛線と、公園とのわずかな隙間で栽培していたサトウキビの、青臭く涙の出る程甘かった想い出や八雲神社の神楽殿の裏の梅林で、家から持ってきた塩をすり込みながら噛り付いた青梅の、苦くすっぱい味。
夏の陽がそのまま結実するとこんな味になるのかと思える程力強い味だった地植えのトマトの味。
黒々とした葉を掻き分けてむしり取ったビワの香り高い甘さは、子供にとってはまさに宝の山だった。
イチジクのアクの強い甘美な味は、なぜかギリシャ神話の世界を想像させて楽しかった。
考えてみると、それらのほとんどは盗み取った物か、特定の持ち主のいない自生していた果実や野菜であったのではなかったろうか。
盗むとはいっても、それは花盗人と同じように罪のないもので、決して犯罪的な行為ではなかった。
言わば一種の遊びの形で、大抵の子供にとって、仲間意識を確認するための通過儀礼でもあったのだ。
今日、画室の庭の梅を、ジュース用に少し取り母屋に持って行った。
本家のビワの木には黄色い実がたわわである。
間もなく初夏の味覚のお裾分けが、袋いっぱい届けられるだろう。
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- 平成15年6月16日(月曜日)
【曇】
画室の前庭の一部をネットで囲み、うさぎ達の遊び場を作った。
飼い馴らされているうさぎなので、中に放してやっても直ぐには事情が飲み込めないのか、最初はキョロキョロと辺りを眺めているだけで、なかなか動き出さないが、その内に嬉しそうに走り回ったり、草を食べたりして楽しそうである。
その様子を木陰からじっと見ている大家さんの存在に気付くと、近くに飼い主がいるので心強いのか、意外に挑戦的な態度で睨みつけている。
大家さんは大家さんで、「なんだこいつは」と言わんばかりにネットのすぐ外側を通り過ぎて行くのが何とも面白い。
チビクロニイちゃんの毛並みは、大家さんとそっくりで、耳と後足の特徴を除けば、まるで兄弟のようだ。
お互いを不思議そうに見つめ合っている姿は、まるでアニメの一コマのようにも思えるが、ご当人は結構大変な緊張感の中にいるのかもしれない。
その証拠には、チビクロニイちゃんより少し気の小さいスカンクニイちゃんなど、頻繁に後足で地面を叩いて危険信号を発している。
後から生まれた弟チビの四匹の内の一匹が、誰にやられたのか目に傷を負っていた。
可哀想なので仲間から離して、今日から室内組の仲間となった。
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- 平成15年6月15日(日曜日)
【曇時々雨】
五月雨に濡れそぼる谷間の風景の中で、水を入れた田の表面が無数の波紋で埋め尽される眺め程、心を和ませるものはない。
朝まだ早いのだが、ほとんどの田には早苗を植える人達の姿が、ぼんやりと霞んだように浮び上がっている。
今は田植えといっても、ほとんどが機械による作業になってしまい、手植えする様子を見る事はなくなった。
大小山山系は雨雲に覆われ、わずかに稜線が見分けられるが、果してあの形が本当の山の姿なのかどうかよく分らない。
あちこちの梅林ではそろそろ梅の収穫が始まり、近くの施設の直売場に格安の品物が並び始めた。
今収穫している梅は梅酒用で、梅干し用はもう少し置くのだそうだ。
画室の庭の梅も青々と大きく育ち、いつでも採れるのに、母屋ではなぜか一向に採ろうとしないのが、いかにももったいない。
前の畑の梅は今日少し採っていたようだが、いつものようにほとんどの実は地に帰って行くのだろう。
庭のチビ共を狙ってか、最近カラスがよく画室のヒサシの上に陣取っているのが気にかかる。
こんな時だからこそ、大家さん頼みますよ。タダメシばかり食らってないで、チビ共の護衛をしっかりね。
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- 平成15年6月14日(土曜日)
【雨】
小学5年生の6月14日に、一大決心を実行するため、予てから密かに買い溜めていたコッペパン10個をリュックサックに詰めて家出した。
家の近くを走る国鉄両毛線の線路に沿って、一路東京を目指し意気揚々と歩き始め、足利駅の手前まで来た所で線路を離れて駅を迂回し、再び線路に戻り旅を続けた。
目的地は東京の明智小五郎の探偵事務所。
その玄関先に座り込んで、何が何でも小林少年と同じように助手にしてもらうためである。
あの頃は「夢の屋」という貸本屋で借りた本を、一日に一冊のペースで読み続ける毎日であった。
その中に名探偵明智小五郎と助手の小林少年が活躍する、少年向けの全集があり、文字通り食らい付くように読んだものだった。
10歳そこらの少年にとって、名探偵が架空の存在などとは全く考えられず、全て実在する人物と信じていたので、将来は私立探偵になって悪と闘うんだと心に決めて、燃えていたものだった。
勿論、同じような夢を持つ者の例に漏れず、少年探偵団を組織しない訳はなく、お揃いのバッチまで作ったが、日常生活の中でこの探偵団の活躍するような事件が何一つ起きなかったので、いつの間にか自然消滅してしまった。
線路に沿ってどこまでも行けば、きっと東京に辿り着くと固く信じて、今思えば隣の佐野市近くまでは歩いたと思う。
もう足は棒のように疲れ、折からの雨に打たれている内に、リュックの中に詰込んだコッペパンが心配になってきた。
(この雨で溶けてしまったら大変だ。そうだ今日は止めてまた次にしよう。今度はパンがダメにならないようにしてから出発しよう)
家に帰るに都合の良い言訳が見付ると、足取も軽く来た道を戻り、午後8時過ぎに無事帰宅。
家では近所の人総掛りで、今まさに捜索を始めようとしている矢先であった。
物凄く腹が減っていたが、罰として晩飯はヌキ、おまけにリュックの中の品物についての厳しい尋問が始まった。
大人達の目から見ると、カチカチのコッペパンを大事に持っている意味が全く分らないようであったが、ここで白状したら計画がバレてしまうので、貝のように口を噤んで頑張った。
その後、どうしてか東京に家出する機会に恵まれる事はなかった。
だから、とうとう私立探偵にはなれなかったのだ。
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- 平成15年6月13日(金曜日)
【曇時々晴】
未明まで降り続いた雨のせいか、今日は朝から蒸し暑くて仕方がない。
画室に着いたのが午前7時を少し過ぎた頃だったろうか、いつもは上着を一枚着ないと少し肌寒いのに、今朝は半袖でも平気であった。
一夏が確実に近付いて来ている事を実感する。
外の庭の四匹のチビ達も中の連中も、とりあえず無事なのに安心する。
どこかの不心得者が飼い犬を放したりしないかとハラハラしているのだが、さすがにそこまでは遠慮しているのが有難い。
今日も早くから大家さんが来て、こっちの様子をうかがっているが、バターピーナッツ位しかないのでそれを置いてやると、イソイソと食いついている。
その内に長男がキャットフードを持ってきたので、皿に入れて庭に出しておくと、間もなくどこからともなくやって来て、当然のような顔で堂々とたいらげているのが心憎いが、大家さんのおかげで他の猫が来ないのが助かる。
今朝義姉から兄が18日に退院すると聞く。
午後その件を東京の姉に報告。
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- 平成15年6月12日(木曜日)
【雨】
今日また画室にクロタン(別名ブスネエちゃん)とスカンクニイちゃんがやって来た。
最初の内は二匹共辺りをキョロキョロと見廻して、かなり不安そうであったが、北の庭に放してやると段々打解けてくるのがよく分った。
中でもクロタンは直ぐに慣れて、広い庭を嬉しそうに走り回っていた。
前庭にいるチビ達四匹も、最近ではすっかりたくましくなり、朝エサをやりに行くと元気にそばに寄って来て、差出した手にアゴを擦り付けてくる。
昼近くになると、大家さんがいつものように巡回して来たので、弁当のお裾分けをすると、雨の中にもかかわらずなかなか次に行かずに、木の下で雨を避けながらくつろいでいた。
庭のチビ達をいじめないようにお願いしたのが分ったのか、決して手を出さないのが不思議だ。
それにしてもオネエちゃんの臆病には本当に困った。
仕方がないのでオリの前半分が隠れる程のベニヤ板を立ててやると、だいぶ落ち着いたようであった。
チビクロニイちゃんは益々人懐こくなり、オリに入っている時でも全く警戒心がなく、のびのびと寝そべっているのがオネエちゃんと対照的だ。
仕事を終え帰り仕度をしながら外を見ると、大家さんがまだいて、じっとこっちを見ていた。
もしかして今夜は画室に泊るのかもしれない。
多分今日は一晩中雨になるだろうから、何か雨避けをと思い箱を出してやると、イソイソとその中に入って行った。
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- 平成15年6月11日(水曜日)
【曇】
今日オネエちゃんとクロニイちゃんが画室に移って来た。
クロニイちゃんは人懐こいのだが、オネエちゃんはとても臆病で、人の気配を感じると直ぐにパニクってしまうのが心配だ。
パニックがひどい時には優しくダッコして静かになだめてやると、やがて静かになるのだが、そんな性格の彼女には、かえって画室の環境は合っているのかもしれない。
クロニイちゃんは、オネエちゃんよりも一回り大きくて、ダッコするとずっしりと重く、やはり男の子は違うなという実感がある。
ルックスはどちらかと言えば田吾作タイプで、お世辞にもハンサムではないが、それだけに親しみのある奴である。
自宅にはまだ10匹いるので、もう少し画室に移さなければならないが、一番最初に我が家に来たオカアさんと、グレと、チャは家に残さなければならないだろう。
特にオカアさんは、チャとは違った意味で手元に置いておきたい。
欲を言えばクロタン(メス)も出来ればそばに置きたい子である。
前にも話したが、クロタンはブスねえちゃんであるが、とても人懐こいのと、触られるとよく鳴くのが特徴の上に、所かまわずペロペロと舐めるのが面白い。
舐めると言えば、オカアさんもよく子を舐めるが、クロタンとは全く違う舐め方で、我が子を可愛がるような舐め方である。
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- 平成15年6月10日(火曜日)
【晴】
午前10時、一日外泊の兄を迎えに足利日赤に出掛ける。
着いてみると、玄関を守るガードマンが例の人だったので、何となく心が和むのをおぼえた。
車イスの兄のために、玄関先の駐車をお願いすると快く承諾。始めて会話したが、外観の誠実さを音声で表現したら、きっとこんな声になるのだろうと思う程、暖かく柔和なトーンであった。
世に害悪を垂流す人間もいれば、この人のように涼やかな風を齎してくれる人もいる事に、何とも救われた気持ちであった。
庭の遊び場に、もう一匹仲間が増えた。
鼻白ニイちゃんとそっくりのチビクロパンダニイちゃんである。
これで遊び場には四匹の兄弟が入った事になるが、もう一匹のパンダネエちゃんはお母さんと同じオリで生活している。
こいつらの兄貴のチッピは、いじめが激しいので家に連れ戻され、今では廊下の隅に置かれる境遇と成り下ったが、そうしたのは他ならぬ家内の仕業である。
理由は、チャが興奮して困るからなのだそうだが、いつかきっと天罰が当るだろう。
昨夜、せめてもの仕返しに、家内がチャのためにだけ買ってきたバナナの一房を、全部他のうさぎに食わせてやった。
ざまあみろ。
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- 平成15年6月9日(月曜日)
【晴】
朝とりあえず庭に降りてみると、チッピが淋しそうにオリの格子沿いに表を眺めているのが目に入った。
どうやら無事に夜を明かしたらしい。
チッピはチャとは正反対の性格で、エサをやるのにオリに手を入れようものなら、前足の強烈な連続パンチにみまわれる程である。
それが今朝はチッピの方から近付いて来ただけでなく、背中を撫でても逃げもせずにじっとしているところをみると、慣れぬ場所でかなり淋しかったのだろうか。
間もなく家内と長男が、歯むきニイちゃんと鼻白ニイちゃんを連れて来たので、一緒の遊び場に入れたとたん、兄貴分のチッピが二匹を追いかけ回してどうしようもない。
仕方なくチッピを引離して様子を見ると、兄弟達も追いかけっこはしているが、何とものんびりとした感じなので、これなら大丈夫だろう。
その後にチビクロニイちゃんも入れてみたが、多少のいさかいはしているものの、とりあえずは大きなケガをする程の激しさで争っている訳でもなさそうである。
とにかく明日の朝の様子で次の処置を考えよう。
今日は小生の誕生日である。
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- 平成15年6月8日(日曜日)
【晴】
今日は庭に作ったうさぎの遊び場にチッピが来た。
チッピはチャと同じ所にオリがあるが、その扱いはチャに比べるとまるで岩窟王のようだ。
チャがのんびりと外で遊んでいる時、その様子を何となく雰囲気で感じるのか、狭いオリの中で暴れまくっている。
時々オリの掃除をする間だけ、しばらくの間外で遊べるが、その量はチャとは比べ物にならないのだ。
チッピが岩窟王なら、チャはさだめしどこかの国の王子様みたいだ。
だからチッピは最初に遊び場で楽しむ権利がある。
少し湿った土とまばらに生えている草、そして梅とヒバが作る木陰は、かなり涼しいし風も吹き抜ける。
広さは三畳程あるので、一匹で遊ぶには充分だろう。
その中にオリごと入れたが、最初はビックリしたのか、上蓋が開いているのに自分のオリから出ようとしなかった。
20分か30分程じっとしていたろうか。その内に外に出ると、後は慣れたのか、遊び場の中を嬉々として走り回っていた。
始めは家に連れ帰る予定であったのを急遽変更し、思い切ってお泊りをさせる事にした。
明日の朝、行って見たらどこかへ消えてしまったりしたらどうしよう。
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- 平成15年6月7日(土曜日)
【晴】
午前9時からのレッスン中に、前の畑の亀山のオバさんが野菜を入れたカゴを抱えて画室の庭に入って来た。
中には玉葱と、収穫には少し早い新ジャガがいっぱいであったが、聞けば昨夜猪が畑に来て、玉葱やジャガイモをかなり食い荒して行ったのだという。
本当はもう少し置いてからジャガイモを掘る予定であったのに、このままでは根こそぎ食われてしまうので、シャクに触るが今日の内に全部掘ってしまうのだそうだ。
何年か前からこの辺の山裾の畑に猪が出るとは聞いていた。
しかし、こんな人家に近い場所にまでエサを求めてやって来るとは、やはり山にエサが少なくなってしまったのだろう。
キジやコジュケイなどは毎日のように見かけるし、水の入った田には、よく鴨が遊んでいるのを目にする。
猪を含めて何となく自然が豊かなように思ってしまうが、実際はその逆なのかもしれない。
猪は今夜も来るのだろうか。
もし来ても、庭に作ったうさぎの遊び場を壊さないで欲しい。
昼少し過ぎ、久し振りに大家さんが庭に来てくつろいでいた。
うさぎの遊び場をしげしげと見ていたが、その内に梅の木の下に寝転がってのんびりと昼寝を始めたようだ。
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- 平成15年6月6日(金曜日)
【晴】
帰宅途中にホームセンターで買物をする都合があったので、いつもとは違う道を自転車で来ると、前方の橋で車が渋滞しているのが見えた。
変だなと思いながらその橋を渡って行くと、何ともおぞましい光景に出くわす事になった。
橋もその先の道も車一台がやっと通れる程の幅しかないのだが、途中に広くなっている場所が二ヶ所あり、折悪しく向い合せた車は、そこを使って擦れ違うのだが、目の前の車は他人の迷惑など全く意に介さずに、双方譲り合おうとせずに睨み合っている。
どちらかが少し譲ればそれで済むのにと思っても、当事者は既に正常な心理状態とは程遠い顔をしているのが、ウインドウ越しでさえよく分る程であった。
一台はBMWで、ドライバーは一見妙齢な中年婦人で、身に付けているのは、多分有名ブランド品というものなのだろう。
もう一台は女性がよく乗っているタイプのピンク色の車で、30代後半の女性がハンドルを握っていた。
二人共眼が座り、表情がひきつって目を背けたくなる程醜く、悪意と敵意が毒のように漂っていた。
過日のゴリ押し女といい、今日の二人といい、ごく普通の主婦か何かだと思うのだが、皆本当にどうしてしまったのだろうか。
本当におかしいよ。このままだと大変な事になるよ。早く気付いて何とかしないと、日本はもう駄目かもしれない。
国道293号を青信号で渡っている直前を、完全に信号無視の車が強引な加速で走り抜けて行った。
小柄な中年主婦が運転していたが、安全運転や人命尊重に対する配慮など微塵も無かったのがひどく空しかった。
そんなろくでなしでも、家に帰れば子供もいるだろうに。
どんな家庭環境なのかを想像すると背筋が寒くなってくる。
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- 平成15年6月5日(木曜日)
【晴】
師のアトリエにあった看板を画室の塀の内側に設置した。
勿論外から見えるように塀の上の高さまで持上げたので、後から見ると何とも頼りない雰囲気である。
多分台風の時や冬の大風の時には、看板を支えている二本の柱は折れてしまうだろうから、そんな時には取り外せるようにしておいた。
木枠にブリキを張り、白いペンキの下地に黒字でアトリエ白美と大きく入り、その下に美術肖像画と赤の文字が書かれている、しごく平均的な看板で、お世辞にもセンスが良いとは言えないが、目立つという点では相当なものである。
目立つといえば、我が愛車の電動スクーターは、ほとほと困る程好奇の目にさらされ、最近では少し恐怖症気味になり、人がいると思わず脇道に逸れて人目を避けてしまう。
別に目立ちたくて乗っている訳ではないのだが、わざわざ立ち止り、こちらの後姿を見ている様子がバックミラーに映るのを眺めると、何だか気が重くなってしまうのだ。
帰宅途中に兄の入院先に立ち寄ったが、通りの脇の自転車置場に駐輪してあるスクーターを見ると、なるほどふざけた眺めである。
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- 平成15年6月4日(水曜日)
【晴のち曇】
おもらし以来、チャは家内の監視下で、ほんの一跨ぎ程度の場所を自由に動き回れるだけの身になってしまった。
夕方仕事から戻り、オリの中のチャに声を掛けて、隙間から手を入れると、夢中で鼻先を擦り付けてくるのを見ていると、少しかわいそうになるが、今までのように外に出せば、多分部屋中オシッコだらけになってしまうだろう。
チャがオリに入ったおかげで、夜はグッスリと休めるのはありがたい反面、体の上に乗ったり、顔を覗き込んだりされないのも淋しいものだ。
例の「ウン・ウン」という独特のノド声も間近で聞く事もなくなった。
その内に庭に広めの遊び場でも作ってやろうと思っている。
しかし冬になれば、また屋内に入れてやらないと、とても越冬はできないだろう。
とにかく世話の焼ける奴らだが、結構情が交うものである。
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- 平成15年6月3日(火曜日)
【晴】
鼻白ニイちゃんをお母さんから引離したのが気に食わなかったのか、最近かなり凶暴性が強くなってうっかり手を伸ばそうものなら、唸りながら噛付いてくる。
その上やたらに気が強くて、オリの隙間から鼻っ面を突出して何とか人の手に歯形を付けようと狙っているのだから、危なくて仕方がない。
お母さんの子供達の中で一番獰猛そうな面構えの歯むきニイちゃんは、思ったより大人しい性格で、ダッコすると歯をむいて怒るくせに、決して噛付こうとはしないが、油断すると強烈なキックがくる。
今お母さんと一緒のオリにいるのは、結局一番甘えん坊のパンダニイちゃんで、これが結構気が荒い。
近頃はインコのポコのカゴもうさぎと並んで置いてあり、最初はお互いに睨み合っていたが、今では慣れたのか平気でくっついているのが奇妙だ。
お母さんの最初の子供の中で数少ない女の子のペロペロクロタンは、この頃相手にしてもらえないので、たまに声を掛けても以前のように走り寄って来ないで、プイッと横を向いて知らん顔をしている。
かわいそうなので撫でてやっても、手を舐めるどころか、じっと身を硬くして心を開かないのには参ったが、しばらく撫で続けていたらお義理のようにほんのちょっとだけ舐めた。
うさぎは本当は感情豊かな生き物なのだという事が身に染みて分った。
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- 平成15年6月1日(日曜日)
【晴】
先日チャがおしっこを漏らしてしまった。
室内に放しておいても決してお漏らしはしなかったのに、いったいどうしたのだろう。
怒った家内はチャを室内の一隅に閉じ込めてしまったが、それを悲観したのか、声を掛けてもそばに来ないばかりか、こっちを振り向こうともしない。
手を伸ばすといつもなら直ぐにすりよって来るのに、今は逃げてしまう。
時々様子を見に行くと、じっと部屋の隅にうずくまって動こうとしないのだが、夜中布団の上を走り回っていた身にとって、今の状態はかなりショックなのだろうと思うと、少しかわいそうでもある。
うさぎという動物が、あれ程感情の豊かな生物だったとは本当に驚きである。
確かに一匹一匹非常に個性がある事は今までの飼育経験からよく知ってはいたが、今回は改めて驚かされた。
さっき帰宅して直ぐにチャの所に行き、声を掛けてみたがしらんぷり。
「まいったなぁ」というのが本音である。
■アトリエ雑記は平成12年12月15日からスタートしました。
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