アトリエ白美「渡辺肖像画工房」 渡辺晃吉
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- 平成14年7月30日(火曜日)
【晴】
リハビリを兼ねて自転車で画室に向う。
午前6時少し過ぎ、鑁阿寺の北門の前を東に曲ると、なんと昔懐かしい納豆屋さんと出会った。
「ナーット・ナットー・ナットー」あの独特の売り声を本当に久し振りに聞いた嬉しさに、思わず後を追ったが、どうしても追い付けないのには参った。
納豆屋さんは出会う人毎に大きな声で「おはようございます」と挨拶をすると、相手も思わず大きな声で返事を返すのが面白い。
鑁阿寺の東の堀を南に進み、南の堀に沿って正面の大門の前で自転車を止めると、納豆屋さんは後の箱から納豆を出していた。
きっとどこかの家から声が掛ったのだろう。
それを見るとなにか安心して画室への道に戻った。
午前7時30分画室着。
どうやら二時間以内で辿り着けたようだ。
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- 平成14年7月29日(月曜日)
【曇】
ついこの間までいたる所で咲き誇っていたアジサイに代って、今ひまわりとむくげがそこかしこで夏の陽を浴びている。
中でも、むくげの花の色の豊かさは、行き帰りの道に文字通り花を添えてくれるのが嬉しい。
もうひとつ、今の季節で忘れてはいけないのが夾竹桃だろう。
有害植物だそうだが、咲く花は美しい。
大沼田のあちこちにあるぶどう園が、そろそろ収穫の準備に入っているようだ。
ぶどう棚の上に鳥避けのネットを張る作業が始まった。
間もなく出来上りを告げる便りが届くことだろう。
この辺のぶどうの品種は「巨峰」と「ピオーネ」がほとんどで、ごくわずかに「デラウェア」があるようだが、最近ではほとんどお目にかかれなくなった。
近くのリンゴ畑のリンゴの木に青い実がたわわに実っているが、いったい誰がいつ頃収穫するのか今もってよく分らない。
ある日突然に実がひとつもなくなっているのに気付くのだが、噂によれば、この辺のリンゴは甘味がほとんどなくて、パサパサしていて、とても食べられないと聞くが、本当は意外に美味しかったりするのかもしれない。
近い内ひとつだけ盗んでみようと思っている。
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- 平成14年7月28日(日曜日)
【雨のち曇】
先週の土日もそうだったが、今週も各所で夏祭りが行われていて、画室近くの追分の辻でも、朝早くから祭りの準備で多勢の人達が働いていて賑やかであった。
最近の祭りは時代を反映してか、納涼大会のような感じで、あの懐かしい祭の風情は、残念ながらもうどこにもないようだ。
それでも子供達は祭半天を着て、大人達が引くリアカーに乗ったお神輿の後にぞろぞろとくっ付いて歩き、何人かがこれもリアカーに乗った祭太鼓を打ちながら、家々に立ち寄ってお賽銭を貰っている。
ドン・ドン・カッカッカと遠く近くに、いつまでも聞えている太鼓の音だけは、夏祭りの季節をこの谷中に知らせているのだろう。
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- 平成14年7月27日(土曜日)
【晴】
午前9時、今日の塾生が来室し、二時間のレッスン開始。
風が抜ける割にはあまり涼しさが感じられない。
ここ何日間かの暑さには、さすがにまいってしまう。
たしか子供の頃の夏はこんなだったような気がする。
じりじりと照りつける太陽と青空にのし上がっていく入道雲、蝉時雨にはためく氷の旗。
アイスキャンディー売りのおじさんの自転車には、決って幟旗が立っていた。
汗を滴らせて歩く道の端のトマト畑からは、今では想像できないほど強烈な匂いが漂ってきて、生温かい熟れたやつを黙って頂き、ガブッと噛付くと、驚く程ジューシーで濃厚な味が体全体を包んで、思わず息を詰らせながら喰らいついたことを思い出した。
あの頃の道は人の歩く所で、車は忘れた頃に白煙を引きながら走り去るものだった。
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- 平成14年7月24日(水曜日)
【晴】
昨夜チビグレを追い掛け回していじめていたチビクロフーリガンとその仲間をお仕置きするために、皆から引き離して別のオリに入れておいたが、今朝画室に着いて様子を見ると、どこ吹く風でくつろいでいた。
昼間なら大丈夫かと思い、また一緒にしてみたらおとなしくしていたので一安心。
身近で観察していると、うさぎにもそれぞれに個性や性格の違いがあるのがよく分って面白い。
それに毛の色と性格もなにか関係があるようだ。
黒色は元気で活発、茶色は人懐こく利口で、グレー系はおとなしくデリケートのようだ。
チビの五匹の中でグレーの色が一番淡いチビネエちゃんはまるでお姫様みたいにおしとやかで控え目の女の子。
いつもひとりでオリの隅に座っているので、思わず声を掛けてしまうのだが、フーリガンの悪共だって結構可愛いものだ。
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- 平成14年7月22日(月曜日)
【晴】
通称「草カキ」、別名「両刃鎌」という道具は、実に使い勝手が良い。立ったままでぐんぐん草を刈ることができる。
形状は細長い二等辺三角形で、紙ヒコーキのようだが、先のトンガリと刃の部分、トンガリの逆の部分の角と、三角形でいえば底辺にあたる部分と、三ヶ所が使い分けられるのだ。
おかげで草刈りがはかどって大助かりであった。
草刈りも今日が仕上げで、当分は暑い思いをせずにすむのがなによりも嬉しい。
そういえば午前中に見学者が来ていたようだ。
なにか尋ねられない限り、特別に声は掛けないことになっているので、そのまま放置して仕事を片付ける。
最近はよく人が訪ねて来る。
嬉しくもありがたいことと感謝でいっぱい。
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- 平成14年7月21日(日曜日)
【晴】
朝7時半頃、画室の前の道を数人の男達が長い円柱を何本か乗せたリアカーを押しながら通って行った。
その後を軽トラックが子供用神輿を運んできたのを見て、あ〃そろそろ夏祭りが始まるのだと気付き、草刈りをしておいてよかったと思った。
画室の西北にそびえる大望山という山の中腹にある大山禰宜神社の祭礼だが、画室のすぐ近くの追分の辻でも祭をするので、その準備のために、地区の人達が集まって来ているのだろう。
以前はこの辻を樹齢350年以上の老松が深い影を落して、文字通り旅人の休息の場を提供していたのだが、残念なことに松食虫にやられて切り倒されてしまって、今は驚くほど広い切株だけが痛々しく残っているだけである。
そういえば今日から夏休みが始まったようだ。
来週は辻が人で賑い、子供達の神輿が部落の中を練り歩くのだろう。
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- 平成14年7月20日(土曜日)
【晴】
午前7時40分画室着。
うさぎのオリの掃除やエサやりに一時間以上かかり、その後庭の草刈りの続きをするが、まるで拷問のようであった。
帰宅後戸棚の整理をしていたら、今から24〜5年前になるだろうか、ある生保会社がビートルズを社のイメージキャラクターに採用し、何種類かの販売促進用グッズを作ったのだが、その中で一番人気のあったバスタオルが未使用のまま箱入りで出てきた。
しかもジャンボサイズだからこれは凄いことになった。
あの当時でさえ、ビートルズ愛好者の間で熱狂的に扱われたのを今でもよく憶えている。
勿論非売品のレア物として、現在の価値はおよそ想像できるというものだ。
むしろ金銭的価値よりは、これを所有している事に意味があるのは当然で、古ぼけたボール箱から四半世紀の時の経過が漂ってきて、しばしあの頃に想いをはせた。
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- 平成14年7月19日(金曜日)
【晴】
仕事の合間をみて庭の草を刈るのだが、その量がすごい。
みるみるうちに大きな草の山が出来ていくのに驚く。
多分去年の二倍はあるだろうか、それに種類も少し違うようだ。
丈が高く密集しているので量も増えるのだろうが、それにしても一向にはかどらないのには閉口する。
同じ面積を刈り終わるのに時間が掛ってしまうからなのだが、どうやら草の密集度だけが原因ではないようだ。
汗が滝のように流れ、それが目に入るのでまことに具合が悪い。
脱水症にならないようにしばしば水分補給をする度に小休止するので、なかなか仕事が見えてこないのかもしれない。
草カキを草の中に打ち込む度、バラバラと音を立てて大小のバッタやイナゴが逃げ出してくるのが少し気の毒な気がする。
午後4時、今日の割り当ては終了と勝手に決め、汗で濡れた衣服を着替えて仕事に戻る。
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- 平成14年7月17日(水曜日)
【曇時々雨】
朝からなにやら嵐めいた空模様で、時々突風が吹き荒れる。
台風7号が梅雨前線を刺激しているのだろうか。
それにしても風が熱く湿度が高いので、画室の中を風が吹き抜けて行っても全く涼しくならず、全身ベトベトと汗が止まらない。
仕方なく開口部を全て閉めて、エアコンをドライにして動かすと、かなりしのぎやすくなり、うさぎ達もどうやら肩で息をしなくなった。
午前10時、塾生来室。正午まで室内レッスン。
昼少し前に新潟のH氏より肖像画のモデル写真と、前作の現物が届く。
午後、郵便局と画材店に出掛け、所用を済ませる。
午後6時30分、うさぎ達のお泊りの仕度を終えて帰路につく。
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- 平成14年7月16日(火曜日)
【曇のち雨】
夕方近く、南の縁側でうさぎの世話をしていたら、どうにも庭の雑草が気になって仕方がない。
いつの間にか軒下ぎりぎりまで丈の長い猫じゃらしや名前もよく分からない草に覆われて圧迫感さえあるのだ。
せめて軒下の部分だけでもきれいにしようかと、下に降りて手近な所から何本か抜き始めた。
ふと手元を見ると茶褐色の銭まだら模様が目に飛び込んできた。
短い尻尾とずんぐりした胴体。慌てて飛びのき、縁側に掛け上がってよく見ると、やっぱりマムシだった。
もう40年程昔になろうか、群馬県の山奥で出会ったのが最初で、今回が二度目。しかもそれが画室の庭先とは驚いた。
しばらく動かずにいたマムシは、その後慌てる様子もなくしずしずと藪の奥に消えて行った。
明日からはなんとしても草刈りを始めなくてはと心に誓った。
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- 平成14年7月14日(日曜日)
【晴】
今日付けの新聞に画室の記事が掲載されるので、今朝はいつもより早目に家を出る。
午前8時少し過ぎに画室に着き、すぐに土間を開けて見学者が訪れても良いように準備する。
案内板を表に出して間もなく、ご近所のご婦人が前を通り、案内板の前でしばらく立っていたが、中には入らずに去って行った。多分、新聞記事の確認に来たのだろう。
午前10時過ぎに車が何台か画室の前を徐行で通り過ぎて行ったが、やはり新聞記事を見てのことと思われた。
夕方になって記事を見て来たと、直接来室する人達がチラホラと出てきたので、その都度仕事の手を止めて応待する。
ほとんどは散歩を兼ねての人か、画室からそれほど離れていない所からの訪問であった。
意外に早く反響があったのには驚いた。
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- 平成14年7月12日(金曜日)
【晴】
土間の展示を終えて、画室内の展示可能な場所に、F1号を中心とした小品を20数点程掛け、汗だくの作業がほぼ完了したところに、朝日市民ニュースの阿部女史が14日発行の「朝日市民ニュース」を届けにわざわざ来室してくださった。
誌面には盲目の画家長谷川沼田居 の画業を顕彰する「心眼の画家―長谷川沼田居」展についての記事もあり、思わず熟読させていただいた。
沼田居は中央画壇を嫌い、生涯のほとんどを郷里の足利で過ごし、文字通り画業三昧の78年を送り、3,000点余の作品を残して昭和58年逝去した鬼才である。
面こそ違え、同じ誌面にアトリエ白美の記事も掲載されることを知り、名誉この上ないと恐縮の極みであった。
長谷川沼田居は近い将来、必ず世界的な脚光を浴びると信じて疑わない。
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- 平成14年7月11日(木曜日)
【晴】
昨夜吹き荒れた台風6号が東北に去って、今朝は秋晴れを思わせるような晴天となったが、とにかく暑い。
この熱気は台風が運んできた置き土産だろうか。
画室に着くとすぐに開けられる所は全部開けて、折からの風を思い切り通すと、室内はかなり快適になった。
今日は小品を額装展示する仕事に忙殺されて、気が付いたら汗まみれ。やはり風が暑いのだ。
仕方なくクーラーを使ったが、悔しいことに涼しい涼しい。
さっきまでオリの中で喘いでいたミニうさぎ達が、今度は活発に動き始めたのを見て、なんだか可笑しくなってきた。
午後6時30分に予定の仕事を終えて帰路につく。
明日も少し額装展示の仕事をこなさねばならないだろう。
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- 平成14年7月9日(火曜日)
【晴のち曇】
聞けばJFAがジーコにオファーしたことろ、ジーコは前向きであるそうだが本当だろうか。
もしその形が実現したら、日本は真の底力を引き出すことになるかも知れない。
トルシエジャパンが、成長期の少年の可能性を秘めた力であるとしたら、ジーコジャパンは、柔軟で強靭な青年のパワーを秘めた若き獅子を生むだろう。
ワールドカップ™ジャパンは新しい多くのサッカーファンを生み、そのほとんどがもはやサッカーを離れることはあるまい。
この12人目の戦士こそ、実は土壇場での奇跡さえ生みかねない途方もないパワーを持っているのは、衆知のことである。
2006ワールドカップ™は、おそらく、2002をしのぐドラマの誕生を見ることになると断言して何のはばかりがあるだろうか。
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- 平成14年7月7日(日曜日)
【晴】
フジテレビの27時間テレビで、さだまさしとくずのメンバーが富良野に行って、例の石の家で待っている黒板家の人達と出会うはずが、不可抗力のために中継予定時間には辿り着くことができず、目的は果せなかったようだ。
五郎も純も蛍も、そして富良野の人達や、この時のために富良野に集った道民の方や内地からの人達は、さぞがっかりしたことだろう。
司会者のみのもんたさんが意味じても杉田監督に訴えたように、なぜ最終回を迎えなければならないのだろう?
全く同感だ。
思えばもう30余年も昔になるが、私の従兄の子、とは言っても年齢差が5歳なので、そっちが従兄のようなものなのだが、縁があって脚本家の倉本聰氏の内弟子となった。
その従兄が結婚する時の媒酌人が倉本御夫妻で、私が司会の大役を仰せつかったために、親しくお話する機会を得たが、その折にお聞きしたスケールの大きな構想が、今考えると「北の国から」だったのだと思う。
以来多くの日本人が、五郎や純や蛍と共に波乱の20世紀を生きてきた。
そこには父母の青春があり、その子らの青春もまた後を追うかのように黒板一家と共にあった。
登場する人物は皆、その本質に「善」を育てている人達ばかりで、もしかしたら、その辺が今回最終回を迎えなければならなかった理由のひとつなのだろうか。
いや、別れは惜しむまい。おそらくそう遠くない日に、再びあの人達と再会できる予感が私から去らない。
多分、21世紀に相応しく大きくなった人達による「北の国から」が帰ってくるだろう。
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- 平成14年7月6日(土曜日)
【晴】
10年程前に、義父は辞世の歌を家内に託したという。
家内はその役を果すべく、何度も繰り返して暗唱し、その日に備えて来たようだ。
その時がはからずも7月1日に来てしまったが、辞世の歌を残す人の心の潔さに、今更ながら頭を垂れなければならないと共に、その歌をじっと心にしまい守ってきた者にもまた讃辞を贈らなければならない。
思えばワールドカップ™決勝の日に義父のための身支度を整える手助けが出来たことを、どれほど天に感謝したことだろう。
その意味でも2002ワールドカップ™は、特別の価値を持って、深く心に刻まれた。
誠に恐縮だが、義父の辞世の歌を、ここに披露したい。
辞世の歌
過ぎし日の今ははかなき事なれや
野末の露かうたた寝の夢
昌美
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- 平成14年7月5日(金曜日)
【曇】
中学の頃、サッカーの布陣はFがセンター・レフトインナー・レフトウイング・ライトインナー・ライトウイング、HB(ハーフバック)がセンター・レフト・ライト、FB(フルバック)がレフト・ライト、そしてゴールキーパーというのが常識であった。
Fがディフェンスに回ることはほとんどなく、わずかに両ウイングが自陣の半ば近くまで下がる位で、逆にHBがオフェンスに回る場合は、両翼がわずかにその役を果すのみ。FBはディフェンスに徹するという形であったと思う。
現代サッカーのスピーディーな攻撃力と防御力を見るにつけて、その著しい進化に驚きを禁じ得ない。
両軍、互いに逆三角形の陣形を、まるで硬質ガラスでもぶつけ合うかのようにぶつけ合い、それでもなんとか試合が進んだのだから面白いものだ。
かつてレフトウイングで走り回った経験のせいか、ワールドカップ™の素晴らしい戦いを観る度に、選手達と共に息を弾ませてフィールドを走り回る自分を想像してしまう。
おそらく、かつてのサッカーマン、そして現役のおびただしいサッカーマン達も、同じ気持ちを抱いて夢のような時間を過したのだろう。
本当にお疲れ様、そして次回もまた共に走り回ろう。
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- 平成14年7月4日(木曜日)
【晴】
真夏のような暑さとなり、直射日光が地面から湿気をぐんぐんと解き放って、文字通りうだるような朝を迎えた。
午前中にユニセフからのDMが配達され、中を見てみると、ユニセフとFIFAとの協力によるコソボ難民地区の子供達へはサッカー用品を贈り、ガーナでは「ポリオ撲滅キャンペーン」の記事が目に入った。
加えて、ワールドカップ™が広く世界の子供達の平和と安全に役立つ方向へ行くための働きかけをしているとも書いてあったのを見て、正に世界の歩みは、決して絶望的な要素ばかりではない事を知った。
今日、義父を送る儀式の中で、驚くほどの数の「にわかサッカーファン」と出会い、話に花が咲いた。
これもワールドカップ™の大きな成果のひとつなのだと思う。
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- 平成14年7月3日(水曜日)
【曇】
ブラジルチームが熱狂的な歓迎のもとに帰国したのは当然であるが、準優勝に甘んじたドイツチームを、ドイツ国民は勇者として暖かく、そして熱烈に迎えた。
カーン選手は4年後の雪辱を誓い、群集は賛同のどよめきで応えた。
それはまるで4年前のロナウドであり、ベッカムを思い起こさせる、劇的なシーンであった。
人は挫折を経験してこそ、更に大きく強く優しくなれるものなのかも知れない。
2006ワールドカップ™が昨日から始まった。
戦場へのゲートが開くまで、あと1,428日しかないのだ。
フィールドの勇者達よ、決して気を緩めてはならない。
まだ1,428日もあるなどと思ってはならない。
ただ少し長い通路が目の前にあるだけなのだから。
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- 平成14年7月2日(火曜日)
【曇】
午前中の所用を片付けた後に、家内の実家に向う。
今日は午後2時に納棺する予定なのであまり急かずにすむ。
着くと既に典礼社のスタッフが来ていたので、細かな点の打ち合わせをして納棺の準備に入る。
文字通り身内だけの儀式であったが、送る者の胸中に少しづつ現実を受け入れる覚悟が生まれ始めたようだ。
しばらく疎遠であった親族も次第に打ち解けた態度で接してくるようになってきたのがお互いに嬉しい。
一段落したところで、少し酒が出て一息入れ、笑いを交えて昔話に花を咲かせ、亡き父への供養とした。
午後8時30分頃、朝日市民ニュースの阿部女史より電話。
今月14日の掲載記事の原稿内容についての問い合わせであった。
長男が応待して内容を確認し、プロの仕事の手際に感嘆。
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■アトリエ雑記は平成12年12月15日からスタートしました。
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